【基地見学】静浜基地20211112

駐屯地/基地および部隊

2021/11/12(金)静浜基地の見学に行ってきました。

まずは広報資料館へ案内されたのですが、道中初めての基地見学の方から「建物が緑色なのはなぜでしょう?」と質問がありました。理由は空から建物が目立たなくして、敵が来た時に攻撃されないようにしているとのことです。私は数回基地や駐屯地に来ているからか全く疑問に思いませんでしたが、初めての方には不思議に見えるのですね。

始めに渉外室長の志垣さんに自衛隊、航空自衛隊、静浜基地の役割などについてご説明いただきました。志垣さんはでF4ファントムのパイロットだったようで、同行した戦闘機マニア(とりわけF4が好きな様子)の方は目を輝かせていました。

陸上自衛隊は警察が、海上自衛隊は海上保安庁が存在しているが、航空自衛隊にはそのような関連する組織はなく、空の安全や警備はすべて航空自衛隊が担っているとのこと、なるほどです。

領空侵犯する航空機への対応についても教えていただきました。

静浜基地は静岡空港から10km程度に位置しており、空港とこれほど近い基地はほかにないとのことです。訓練空域や進路安全上難しいことのようです。

静浜基地は防府北基地と同様に航空学生の初等操縦課程 :T-7を使用しての教育訓練をする施設です。敷地は航空自衛隊基地の中では小さく、規模は浜松基地の1/4ほどだそうです。滑走路も短く、約1,500mです。

ここに来る航空学生というのはかなり狭き門を突破したエリートで、ネット情報によると競争率は30倍近いそうです。そんな選ばれた学生が約2年間の航空学生課程、地上準備課程を経て行われるのが初等操縦課程です。

自動車学校で例えると、座学で車の構造や交通ルールを学んだ後の「教習」といったところでしょうか。ですが、飛行訓練17時間の間に手順通りの準備~飛行ができないと「適正無し」として脱落するというとても厳しいところだそうです。

静浜基地の概要を説明いただいた後、見学に向けて移動しました。

途中、第二次大戦時の艦上爆撃機:彗星のエンジンが展示されていました。ここ静浜基地は大戦中、海軍の藤枝航空隊として運用されていたためこのようなものも残っているのでしょう。

ちなみに彗星のエンジンはドイツダイムラー社製のDB601Aというメッサーシュミットなどに搭載されていたものを日本でライセンス生産したものです。愛知航空機の「アツタ21型」が有名です。倒立したV型12気筒エンジン、ローラー式コンロッドベアリング、燃料直接噴射ポンプ、液冷式などとても複雑なエンジンで、高度な工作技術および整備技術が必要となりあまり稼働のよくなかったエンジンのようです。

最初に消防部隊を案内していただきました。

消防部隊は基地内の火事等に備え、消防器具の点検や消防車の運用を担当しています。また近隣の火事の際には出動して消火活動を行うそうです。こういう柔軟な対応っていいですね。

消防車は飛行訓練があるときには滑走路近くで待機しています。3台の消防車のうち1台はとってもレトロでした。ボンネットトラックタイプの給水車で平成2年製造とのことですが形からすると昭和40年代の車といっても通用する感じです。ですが必要な機能は満たしているのだと思います。逆にかっこいい車です。

破壊機救難消防車というのもありました。航空機火災用の消防車ということでキャビンの上に放水装置があり、社内からこの装置を操作するようです。機械的につながっている放水を操作するガンが運転席/助手席にあり、メカ好きの私にとってはお気に入りポイントです。フロント下部には散水する装置もありました。この車は愛嬌のあるかわいい顔をしています。

残りの1台が普通の消防車です。

この部隊の方たちは自衛隊員だけど仕事は消防士です。自衛隊員といってもいろんな仕事があるんですね。

次に格納庫に移動しました。航空学生が自主的に飛行機の点検をしていました。航空学生は赤色の帽子をかぶっていて一目瞭然です。

点検といっても整備をするわけではなく、飛行前に各部が正常に作動しているかチェックするといった感じでしょうか。自動車も事業用(トラックやタクシーなど)の場合、運行前に点検が必要です。飛行機も当たり前ですが飛ぶ前にパイロットが点検をするということです。飛行機の場合、不備があっても止まって修理するわけにはいかないですし・・・。

格納庫には展示されているT7がありました。小さなプロペラ機と思っていましたが、実物を見るとなかなかの迫力です。機体は富士重工(スバル)が製造、エンジンはロールスロイス製のターボプロップです。なぜ国産エンジンじゃないのかと思ったのですが、ちょうどいいものがないため、開発するよりあるものを買ってきた方が安いからだそうです。確かに大量生産するものではないので、既存のものを買ってきた方が安くできそうです。自衛隊の予算が潤沢ではないこともあり、装備品にはコストをかけてでも国産化すべきものと安く済ませるものがあるということだと思います。

今回初めて知ったのですが、飛行機のプロペラは機体に対して少し斜めに取り付けてあります。理由はプロペラの回転方向によって斜めに進んでしまうのを補正するとのことです。なるほど~。以前、船に取り付ける船外機はまっすぐ進んでいるつもりでもスクリューの回転方向によって斜めに進んでしまうという話を聞いたことがあります。空も海も陸のような道はないので自分がまっすぐ進んでいるかを把握するのが難しいのでしょうね。

その他T-3初等練習機やもっと古い星型エンジンのT6(初期の練習機)も保管してありました。

T7ジュニアという原付の改造車もあります。航空祭などでアクロバチックな走行をしますが訓練で使用するものではなく、整備員たちのクラブ活動とのことです。

その後T7による飛行訓練が始まるとのことで、滑走路脇へ移動しました。T7が整列していて、教官と生徒が準備を始めます。機体の点検~エンジン始動~発進までを見学することができました。点検が終わって滑走路へ移動するまでに結構時間が掛かります。その間いろいろな点検をしているのを見て「これらを全て覚えて間違えず点検する」ことの大変さは少しわかった気がしました。点検が終わると、滑走路へ移動して飛行訓練が始まりました。

次に補給部隊を見学しました。補給部隊は基地で使用する装備・備品などの物品を保管・管理する部隊です。他に災害支援時に必要なものを集めたコンテナを用意しています。災害現場で使用する大きなカッターやチェーンソー、倒壊した家屋の中を確認するカメラ、ヘリコプターの誘導灯などを使用する訓練やメンテナンスも行っているとのことです。静岡市に大きな災害があったときにはこの部隊が駆けつけてくれるのでしょう。その際はどうかよろしくお願いいたします。

またこの部隊には静岡市出身の親子隊員がいました。息子さんは基地内の宿舎にいますが、お父さんは自宅から通っているとのこと。親子が同じ部隊にいるというのはとても珍しいそうです。たまたま一緒に見学した方のご近所だったようです。そこの娘さん(自衛官)と同級生だったようで「娘にLINEしよう」と記念撮影していました。

隊長さんは幹部なので2~3年ごとに転勤があります。静浜基地は穏やかでしずかないいところとのこと。また「田子重の寿司・刺身のレベルが高い」とかなりのお気に入りだそうです。

補給部隊の倉庫はとてつもなく古く、数年後には建て替えるが自分がいる間はこのままとのことでした。

以上が今回見学させていただいた3つの部隊についての報告になります。静浜基地でご案内いただいた志垣さんはじめ多くの隊員の方、基地見学の手配をしていただいた静岡募集案内所の河野さん等多くの方にご尽力いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

また、今回の基地見学には初めて参加される会員の方が1名いらっしゃいました。息子さんが今年入隊し新規入会された方なのですが、自衛隊の基地に初めてきて楽しんでいただけたようでした。他の会員の方ともいろいろお話できて、自衛隊についての知識も増えたようでよかったです。

静岡自衛隊家族会ではこのような機会を増やし、会員の皆様の自衛隊への理解を深めていただきたいと考えています。