【海】潜水艦について

装備

潜水艦の歴史

初めて戦果をあげた潜水艦は、アメリカ南北戦争の南軍「H・L・ハンリー」といわれています。1864年、サウスカロライナ州で相手艦の船底に爆弾を引っ掛けたのち遠隔操作で爆発させたのですが、自らも沈んでしまったそうです。

その後、魚雷が開発されてからは潜水艦の有効性が高まります。また産業革命によるエンジン(ガソリン・ディーゼル)、蓄電池などの発明~実用化に伴い、潜水艦は進化していきます。

1900年、ガソリンエンジンのホーランド号がアメリカ海軍に就役します。その後、世界の列強国の海軍は潜水艦の建造に着手します。初期の潜水艦のエンジンはガソリンエンジンが主流でしたが、その後燃料の安全性からディーゼルエンジンに変更されていきます。

第一次世界大戦から潜水艦が本格的に活躍し始めました。ドイツ帝国のUボートが有名で多くの戦果をあげました。

第二次世界大戦時には、Uボートの活躍により潜水艦を本格運用し始めた各国の潜水艦が戦艦や空母などを撃沈しました。ですがこのころの潜水艦は通常時水上航行し、目的地付近で潜航するという運用をしていました。

第二次世界大戦後の1955年、アメリカ海軍が史上初の原子力潜水艦「ノーチラス」を登場させます。原子力潜水艦は酸素を必要としない原子炉を利用して、蒸気タービンで動力を得ます。また蒸気タービンで発電した電力により海水を電気分解して酸素を生成したり、二酸化炭素を処理することもできるため、原則的に酸素補給のための浮上が不要となります。実際に運用しているアメリカ海軍では、乗組員の健康のため70日程度の航海で運用しているようですが・・・。

潜水艦はその隠密性から究極のステルス兵器といわれます。潜水艦が敵国近くまで行って、核弾頭を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射すれば敵国を滅ぼすことができます。このような潜水艦(SSBまたはSSBN)を所有している国はアメリカ、イギリス、ロシア、中国、フランス、インド、北朝鮮といわれています。恐ろしい・・・。

自衛隊の潜水艦

自衛隊潜水艦の歴史

昭和30年 くろしお(米国GATO級潜水艦Mingo)を受領

昭和35年 おやしお(戦後国産第一号潜水艦)が就役

昭和36年 ちはや(潜水救難艇)が就役

昭和37年 はやしお型(以後同型艦3隻)就役

昭和40年 おおしお、あさしおが就役

昭和45年 ふしみ(潜水艦救難母艦)が就役

昭和46年 うずしお型(以後同型艦6隻)就役

昭和55年 ゆうしお型(以後同型艦9隻)就役

昭和60年 ちよだ(潜水艦救難母艦)が就役

平成2年 はるしお型(以後同型艦6隻)就役

平成10年 おやしお型(以後同型艦10隻)就役

平成12年 ちはや(潜水救難艦)が就役

平成21年 そうりゅう型(以後同型艦11隻)就役

平成30年 ちよだ(潜水艦救難艦)が就役

現在はそうりゅう型の後継「たいげい」を建造中

現在運用している潜水艦

2021年時点で運用している潜水艦は以下になります(練習潜水艦は除く)。

おやしお型

SS-592「うずしお」、SS-593「まきしお」、SS-594「いそしお」、SS-595「なるしお」、SS-596「くろしお」、SS-597「たかしお」、SS-598「やえしお」、SS-599「せとしお」、SS-600「もちしお」

諸元

基準排水量2,750t
主要寸法長さ:82m、幅:8.9m、深さ:10.3m、喫水:7.4m
主機械ディーゼル2基、メインモーター1基 1軸
馬力7,750ps
速力約20kt
主要兵装水中発射管1式、シュノーケル
乗員約70人
出典:海上自衛隊ホームページ

そうりゅう型

SS-501「そうりゅう」、SS-502「うんりゅう」、SS-503「はくりゅう」、SS-504「けんりゅう」、SS-505「ずいりゅう」、SS-506「こくりゅう」、SS-507「じんりゅう」、SS-508「せきりゅう」、SS-509「せいりゅう」、SS-510「しょうりゅう」、SS-511「おうりゅう」、SS-512「とうりゅう」

諸元

基準排水量2,950t
主要寸法長さ:84m、幅:9.1m、深さ:10.3m、喫水:8.5m
主機械ディーゼル2基、スターリング機関4基、推進電動機1基
馬力8,000ps
速力約20kt
主要兵装水中発射管1式、シュノーケル
乗員約65人
出典:海上自衛隊ホームページ

動力について

自衛隊が運用しているのは、原子力ではない通常動力型の潜水艦です。ディーゼルエンジンと電気モーターのハイブリッド(混成)による動力を採用しています(ディーゼル・エレクトリック機関)。ハイブリッドシステムは発電機を駆動するためのエンジンを搭載した電気モーター動力です(俗にいうシリーズ式です)。

潜水艦は水上では酸素があるためディーゼルエンジンを使用して航行することができますが、水中では燃焼に必要な酸素がないためディーゼルエンジンを使用することができません(海面近くまで浮上し、吸排気する筒を海面上に出してエンジン用の吸気をするシュノーケル航走というものはありますが、それほど深く潜水できるものではないようです)。よって潜水時はバッテリを動力元として進みますが、バッテリ容量の制約があるため高速・長時間での航行は難しくなります。解決策としては「燃料電池」「AIP機関」「高効率なバッテリ」などです。そうりゅう型の1~10番艦はAIPシステムを、11~12番艦は高効率なバッテリ(リチウムイオン電池)を採用しています。

ディーゼルエンジンはV型12気筒、型式:12V25/25SBを2基搭載しています。排気量や出力などは非公開のようです。

AIP機関(Air-Independent Propulsion)とは、非大気依存推進機関のことです。そうりゅう型はスターリング式AIPシステムを採用しています。

スターリング式AIPシステムは外燃機関という種類のエンジンになります。自動車などに使われているガソリンやディーゼルエンジンはシリンダの中で燃焼が行われる「内燃機関」ですが、外燃機関はシリンダを外から温めてシリンダ内の気体を膨張させてピストンを動かすエンジンになります。具体的には液体酸素とケロシン(軽油に近い燃料)により発生した熱を、シリンダ内のヘリウムを膨張させ動力に変換します。ディーゼルエンジンのように熱を捨てることが少ないため、熱効率が高く燃料の熱を無駄なく使うことはできますが、出力の割にはサイズが大きくなってしまいます。

そうりゅうはこのシステムを4基も装備していますが、4基合わせても高速度航行するほどの出力は得られず(1基あたり75kw程度といわれています)、あくまでも補助的な動力元として低速での運用になっています。

そうりゅう型11~12番艦はリチウムイオンバッテリを搭載したため、スターリング機関及び鉛バッテリは廃止されています。スターリング式に比べて軸出力は低下しましたが、「従来型潜水艦に比べ、水中の持続力や速力性能など大幅に向上した」と発表したので性能は向上しているようです。なお、リチウムイオン電池を搭載した潜水艦は世界初だそうです。

魚雷について

6つの魚雷発射管を装備しています。そこから発射されるのは89式魚雷、ハープーンミサイルなどです。言わずもがなですが、自衛隊は弾道ミサイルを発射する潜水艦を所有していません。

潜水艦あれこれ

勤務時間と食事

潜水艦や護衛艦などの艦艇部隊は、出航している間3時間勤務-6時間休憩を繰り返します。ということは3つのチームに分かれて3時間ずつ勤務するということです。この様子を表にまとめます(イメージするためのサンプルなので実際は定かではありません)。

9-12★12-15 15-18★18-21 21-24 ★0-3 3-6★6-9
A勤務勤務勤務
B勤務勤務勤務
C勤務勤務

Aチームで考えると、1日目は9-12時、18-21時と6時間勤務し、2日目は3-6時、12-15時、21-24時と9時間勤務することになります。

表の★がついているところは食事の時間です。6時~朝食、12時~昼食、18時から中間食、24時(0時)~夕食です。またこれは有名な話ですが、毎週金曜日の昼食はカレーライスだそうです。戦前は土曜日の昼だったようですが、戦後は週休2日になったため金曜に変更になりました。

また以前はスペース節約のため、ホットベットというベットの運用をしていました。潜水艦を運用するために必ず1/3は働いているわけですから、ベットは休んでいる人数分あればいいという考え方です。他人の温もりを感じるベットというのは・・・厳しい。もちろん今はそんな運用はされていないそうです。

館内の照明や生活

潜水艦は基本水中にいて、窓もないため船内は常時明かりが点いています。昼の時間は白色灯、夜は赤色灯がついていて、おおよその昼/夜はわかるようになっています。

潜水艦内は想像がつきますが禁煙です。洗浄式便座のトイレは以前より標準装備だったそうです。第二次大戦中の日本海軍時代から洋式トイレだったので、トイレに関してはいつの時代も最新・快適なようです。

お風呂に関してはシャワーしかなく、湯舟も脱衣所もないそうです。バスタオル一枚巻いてシャワーを浴びに行くのでしょうか・・・?女性の乗員がいないのはこのせいかもしれません。

潜水艦の耐圧殻は電波を通さないので、沿岸にいたとしてもスマホが使用できません。インターネットのない生活を強いられるのはほかの自衛隊員も同様かもしれませんが、隔離された生活となる潜水艦内は相当に過酷なものになると想像できます。狭い空間で音も立てられず運動もできない環境に長くいなければいけないのはどれほどのことでしょうか?ストレス耐性が強くないと潜水艦乗りになれないというのも当然でしょう。