自衛隊で頑張る息子について(MSD)

コラム

私の息子(三男)は、武山駐屯地(横須賀)に勤務しています。29才になります。18才で入隊し、部隊配属してから今年3月までは板妻駐屯地(御殿場)の重迫撃砲中隊にいました。

子供の頃から身長が低く、小・中・高校時はクラスで前から5番目前後でした。しかし体力だけはあり・・・まぁ、元気でケガが絶えない子でしたが、小学校の6年間皆勤だったのは立派でした。卒業式で皆勤賞の表彰が無かったのが残念でしたが・・・。

小学生のころ

そんな低身長の子が中学入学後すぐにバレー部に入部しましたのにはびっくりしました。動機は身長を伸ばすことではなく、友達が入部したから一緒に入部したとのことでした。高校でもバレー部に入部し、身長が低いのをものともせず頑張っていました。                            

将来については、中学3年の頃は警察官になりたいと話していました。長男は高校卒業後自衛隊に入りましたが、任期で入隊し4年で退官しました。

長男が退官してしまったので、私としては三男が自官にならないかなあと淡い希望を持っていました。三男が高校3年生の時、自衛隊の体験(確か3日間の研修のようなもの)に行ってみたいと言ってきたので、これは!と思い喜んで送り出しました。

その後はトントン拍子で自衛隊に入隊となりました。警察官になろうと思っていたのがなぜ自衛官にと思いましたが、実は警察官の試験が難しかったので諦めたのでした。

私としては自衛官になって欲しかったので結果オーライでした。また三男は一般曹候補で入隊したので、長く自衛官をやってくれるかとも思いうれしかったです。入隊式は武山駐屯地になり、入隊後の訓練期間も武山駐屯地でした。

入隊した年のゴールデンウィーク、初めての長期休暇のこともよく覚えています。息子は駐屯地からJRで帰ってきたので、東静岡駅まで私が迎えに行きました。その時は制服で帰ってきて、駅の待ち合わせの場所に佇んでいました。入隊式では全員が制服姿ですからそれなりに壮観でそれはそれでいいのですが、東静岡駅にいる制服姿の息子は微笑ましくもあり誇らしくもあり、とても感動しました。

入隊してから2年目だったと思いますが、「自衛官を辞めるわ」と急にいいだしました。

理由を聞いてみると、昇進試験を何度受けても落とされる、試験の内容はほぼ悪くはないはずだが自分よりずっと悪いはずの奴が合格しているのが納得いかない、勤務行動について上官に意見してみると、簡単に却下され逆に反抗的な態度ととがめられたなど、本人としては一生懸命やっていることが報われないため辞めたいと思い詰めていたたようです。

そのため我慢しろとかそれでも頑張れなどとは到底言えず、息子を励ます言葉がなかなか見つかりませんでした。この時ばかりは息子の気持ちがリセットされるのをただじっと待つしかありません。

家族会の皆さんに子供が自衛隊辞めるって言わなかったか聞いたことがあります。やめたい理由はいろいろありますが、おおむね入隊後1~2年目に自衛隊を辞めたいと言うようです。

その場合、親としては子供の気持ちが収まるのを待つしか無いと思います。

数か月後、昇進試験に合格した時には

「ごめん、この前自衛隊辞めるって言ったけどやっぱり定年までいる事にしたよ」

と言われました。この言葉を聞いた時どれほど安心したことか・・・。

自衛隊を辞めるという事を私たちに言うのは、どれほどの心の中で迷い・葛藤があった事でしょう。でもこのように悩むことによって、人としてまた自衛官として成長していくのだと思います。

私と息子

その後の息子の大きな成果はレンジャー訓練に合格した事だと思います。

陸上自衛官での一つの目標はレンジャーに合格する事だと息子は思っていたようです。私たちにはレンジャーの事は話すことはありませんでしたが、レンジャー訓練を受ける2年以上前からレンジャー訓練を受けようか迷っていたようです。

そのレンジャー訓練を受ける2年前、息子の同僚や上官の方々と話をする機会がありました。「近いうち息子さんがレンジャー訓練に行きますから、お父さん、帰還式典には来てやってください」と言われました。しかし本人にその事を聞いてみると「受けようと思ったけど…あれは無理だ…ヤッパリやめたよ」とあまりの厳しい訓練にあきらめているようでした。その後私たちには何も言いませんでしたが、レンジャー訓練についてずいぶん迷っていたようです。ですが決心して、平成元年の秋のレンジャー訓練に参加しました。

訓練はやはりとても大変だったようですが、それでも無事訓練を終了し帰還式典に私たちも参加させて頂きました。帰還式典は駐屯地全員で出迎えているようで、特に訓練に参加した隊員の所属中隊からは熱狂的な出迎えを受けていました。

息子の所属の重迫中隊からレンジャーを受けたのは8年ぶりとの事でそれは中隊の皆様から熱狂的に迎えられていましたし、その光景を見ていると、私たちも胸が熱くなった事を今でも良く覚えています。

令和3年3月からは武山駐屯地に転勤になり、今は新入隊員の訓練指導を行っています。

今までの板妻駐屯地から自宅まで約1時間半もあれば帰ってこられましたが、武山駐屯地からだと3~4時間掛かります。

板妻にいるころは御殿場で有名な二の岡ハムや馬刺し、最近出来たえびせんなど手土産を良く買ってきてくれました。今は鎌倉のハトサブレ―を買ってきてくれます。

息子は最近では、キャンプにはまっているようで、休みの日には同僚とよくキャンプに出掛けています。車にはキャンプ道具を積んだままになっています。先日家に帰ってきた時にはキャンプで作る料理を作ってくれました。

最後になりますが、今の息子を見ていると自衛官としての生活を大いに満喫していると感じます。息子が定年まで自衛隊にいるかは分かりません。しかし自衛隊を辞める時、自衛官で良かったと心から思える生き方をして欲しいと思っていますし、その為なら私たちはどの様な応援をも厭いません。

息子が、そして他の自衛官の皆様が怪我なく無事最後まで自衛官を務め上げて欲しいと心から思っています。

そして、乱筆乱文を最後までお読み頂き有難う御座いました。皆様の末永いご健勝とご多幸をお祈りさせて頂きます。